最近「脱炭素社会」という言葉をよく聞くようになりました。2020年代に入ってから世界各国の首脳が脱炭素社会を実現するための取り組みを行うと表明してきています。
日本国内でも近年急速に脱炭素が叫ばれるようになってきています。実際にすでに各種取り組みを行っている団体も増えてきていますね。
しかし、この「脱炭素社会」の実現に向けて、いったいどのような取り組みが必要になるのでしょうか?私たちができることはどんなことなのでしょうか?
そもそも、脱炭素社会とは何でしょう?なぜ取り組む必要があるのでしょう?
今回はこの「脱炭素社会」の取り組みについて徹底解説!この記事ではこのような内容についてお話しします。
- 脱炭素社会とは何か?
- 世界各国の脱炭素社会への取り組み
- 日本の脱炭素社会への取り組み
- 脱炭素社会に向けて私たちができること
この記事を読めば脱炭素社会のことがよく理解できるようになります。
世界の喫緊の課題である脱炭素社会の実現に向けて、今日から行動できるようになりますよ。
ぜひ最後まで読んで、明日からの生活で取り組みに挑戦してみてください。
脱炭素社会とは何か?
近年急速に叫ばれ始めている脱炭素社会ですが、そもそも「脱炭素社会」とはどういったものなのでしょうか?
脱炭素社会の定義と、その意義について確認していきましょう。
脱炭素社会とは?
脱炭素社会とは、簡単に説明をすると次のような定義とされています。
脱炭素社会=二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロを目指す社会のこと
1800年代から始まった産業革命以降、世界では多くのCO2を排出してきました。そのため、地球の温暖化が国際的な問題に発展するようになりました。
かつてはこのCO2の排出量を減らしていく社会づくりを世界各国で進めていました。いわゆる低炭素社会というものです。
しかし、排出量を減らす努力だけでは地球の温暖化を改善することはなかなかできませんでした。途上国での産業革命等が影響を及ぼしたようです。
そこで、2015年の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において採択された「パリ協定」において、世界は低炭素社会から脱炭素社会への転換をする方針を固めました。
これまでのようにCO2排出量を減らす努力に加え、CO2の吸収量を増やす努力をし、CO2排出量を実質的にゼロに近づけることを目標としたのです。
なお、この排出量と吸収量を相殺するための取り組みを「カーボンニュートラル」といいます。
これ以降、世界各国が地球の温度上昇を防ぐために、2030年までのCO2排出量半減、2050年までのカーボンニュートラル実現を目標に掲げ、取り組みを進めています。
なぜ取り組む必要がある?
脱炭素社会を目指す理由は地球温暖化の進行を防ぐためです。
IPCCの報告書によれば、今後100年にも満たないうちに世界の気温は4℃以上も上昇する恐れがあるとされています。
地球温暖化の原因の一つとして、CO2の排出量の増加が挙げられています。この排出量を実質ゼロに近づけることで、私たちはより長く安全に住み続けられます。
より長く生活し続けられる環境づくりをするために、世界中で脱炭素社会の実現への取り組みを行うと宣言しているのですね。
実現のためのポイントは?
実現のためには2つのポイントがあります。
- 環境イノベーション
- グリーンファイナンス
環境イノベーションとは、主に新エネルギーに関する設備等の発展に関することです。新エネルギーとして代表的なものは太陽光発電、風力発電などです。
これまでの石油や原子力などの資源に頼らない、新たなエネルギーを利用した電力供給の仕組みを構築していくことで、脱炭素社会の実現に大きく近づくことができます。
グリーンファイナンスとは、上記の環境イノベーション等で脱炭素へ貢献する企業等に積極的な投資をすることです。資金調達のほか、債券(ボンド)の発行やローン(融資)の斡旋などが主な取り組みです。
環境問題にこれまで以上に積極的な投資をすることで、問題解決へ向かうことが重要です。
世界で行われている脱炭素社会への取り組み
急速に取り組みの整備がされている脱炭素社会。各国ではどのような取り組みがされているのでしょうか?
ここでは世界各国のうち、5カ国を紹介していきます。
アメリカの取り組み
アメリカは2020年に一度パリ協定を離脱しますが、2021年に復帰しました。
アメリカは、2030年までにCO2排出量を2005年と比べて50〜52%削減することを表明しています。
また、環境改善を含む各種インフラ設備の改善を行っていくようです。
加えて、ホワイトハウスの運営を2050年までにカーボンニュートラルにすると表明しています。
イギリスの取り組み
イギリスは、2035年までにCO2排出量を1990年と比べて78%削減すると表明しています。これは他国と比べてもかなり大きな数字です。
高い目標設定により世界のグリーンイノベーションの本拠地となること、環境保全と雇用・経済の活性化の両立を図ることを宣言しています。
2021年のCOP26の会場となったことも、高い目標設定のきっかけとなったかもしれませんね。
ドイツの取り組み
ドイツは、2030年までにCO2排出量を1990年と比べ55%削減すると表明しています。
ドイツでは再生エネルギーの積極的な活用を進めていくとしています。すでに風力発電や太陽光発電を積極的に取り入れており、今後もさらに活用の増進を図るようです。
また、車産業が盛んであることから、EV(電気自動車)の普及にも力を入れていくようです。実際に2021年4月にはフォルクスワーゲンがEVへのシフトを表明しています。
中国の取り組み
中国は2030年までにCO2排出量を2005年と比べて65%削減すると表明しています。また、2060年までにカーボンニュートラルを実現するとしています。
一方で、中国は世界のCO2排出量の約3割を占める国となっています。途上国として急激な産業発展をしている国ですから、経済成長を緩めることなく削減目標を達成できるかどうか課題が残ります。
インドの取り組み
インドは2070年までにカーボンニュートラルを実現すると表明しました。しかし、他国に比べ10〜20年ほど目標期限が長いため、課題が山積していること伺えそうです。インドも中国同様に途上国であるため、環境保全にどれだけ力を入れられるかが鍵となりそうです。
日本で行われている脱炭素社会への取り組み
それでは、ここからは日本各地で行われている脱炭素社会への取り組みを紹介していきます。現在、自治体や企業など、さまざまな団体が取り組みを行っているようです。官公庁や企業等にお勤めの方はぜひ参考にしてみてください。
岩手県久慈市
https://www.youtube.com/watch?v=e6rLRsGYqok
岩手県久慈市では、海面温度上昇による漁獲量の減少、観測史上初の台風上陸等の異常気象を経験し、脱炭素の取り組みを始めました。
久慈市は、2050年までに市の運営施設すべてを再生可能エネルギーにすることを目指すようです。
また、市出資の会社が市のダムで発電した電気を買い取り、市施設へ供給する仕組みを構築しました。こうしたエネルギーの地産地消によって費用削減を進めていくようです。
今後は、地形を生かした水力・風力発電を含むより多くの再生可能エネルギーの生産を進めていきたいとしています。
富山県魚津市
https://www.youtube.com/watch?v=H0Hqo-o9PT0
富山県魚津市では、年間のエネルギー消費量を実質ゼロとする建物であるZEB(ゼブ:Net Zero Energy Buildingの略称)を増やすことを実践しています。実際に、公共施設の建て替えの際は市で加工した木材を使用しており、森林の適切な保全に努めています。
また、小学校の建て替え時には、建物の構造の約97%を木材が占めるという環境にやさしい校舎を建設しています。
今後は、木材を生かした木質バイオマス発電への挑戦、公共交通機関のEV化を行っていきたいとしています。
熊本県熊本市
https://www.youtube.com/watch?v=iP1quypqUSk
熊本県熊本市では、2016年の熊本地震を機に脱炭素と防災を組み合わせた政策を展開しています。
ごみの焼却の際の熱をエネルギーとした発電で公共施設へ電気を供給しています。また、災害用の非常用電源としても活用しているようです。
今後は削減した電気料金でEVの導入等の設備投資を行い、さらに脱炭素化を進めていく予定とのことです。
企業で行われている脱炭素社会への取り組み
日本企業でも各社が続々と脱炭素社会への取り組みを進めています。お馴染みの企業から意外な企業まで、さまざまな会社が取り組みを行っており、少しずつ脱炭素の動きがメジャーになりつつあります。
スターバックス
https://stories.starbucks.co.jp/ja/press/2021/coffee-specific-environmental-goals/
スターバックスは積極的に脱炭素の取り組みを行っています。有名なのが、ストローの変更です。プラスチック製のものから、紙製のものを使用するようになっています。
他にも上記サイトのように、コーヒー生産にかかるCO2の削減、節水などを行っていくと宣言しています。
第一生命保険
https://www.youtube.com/watch?v=htkqgZgsjf8
第一生命保険では、グリーンファイナンスを実践しています。
預かり資産の投資先には環境に関する要素を投資判断先の基準の一つとしているようです。また、再生エネルギー関連の地方自治体の取り組みにも積極的に投資をしています。
加えて、本社の電力は全て水力発電で賄っており、今後の事業活動全てを再生エネルギーで賄っていくことも目標としています。
ヴァンフォーレ山梨スポーツクラブ
https://www.youtube.com/watch?v=e6rLRsGYqok
Jリーグ所属のサッカークラブ「ヴァンフォーレ甲府」などを運営するヴァンフォーレ山梨スポーツクラブでは、脱炭素に向けてさまざまな取り組みをしています。
2004年にはすでにリユース食器の使用を始めていました。現在は社内のペーパーレス推進やスタジアムの来場者への公共交通機関の利用呼びかけ、選手尞の節電呼びかけなどを行っています。
ヴァンフォーレ山梨スポーツクラブをモデルロールとして、環境省とJリーグは2021年6月に脱炭素社会移行への連携協定を結ぶに至りました。
今後も引き続き活動を進めることで、地域住民と環境とをより密接につなげる役割を果たしたいということでした。
私たちができる脱炭素社会への取り組み
ここまで、世界各国、日本の自治体、企業での取り組みを紹介してきました。
それでは、個人単位でできるような取り組みはどのようなものがあるのでしょうか?
私たち一人ひとりができる取り組みを5つ紹介しますので、ぜひ明日からチャレンジしてみましょう。
再生エネルギー電力会社への切り替え
1つ目は再生エネルギー電力会社への切り替えです。代表的な会社の例を紹介します。
- 自然電力
- Looopでんき
- ハチドリ電力
- auでんき
- ソフトバンクでんき
電力の自由化が進み、この他にもさまざまな再生エネルギー使用の電力会社が増えました。また、電気料金が大手の会社よりも安くなるケースもあるようです。
電力会社を変えることで、今までどおり電気を使えるの?と不安な方もいると思いますが、こうした電気会社は、地域に設置されている送電網を利用して電力が供給されるため、基本的にこれまでどおりの品質で電気を使うことができます。
電気の品質もそのままに、かつ安い料金で使うことができるのであれば、再生エネルギーもより身近に感じられるのではないでしょうか?
環境に配慮もできて、かつ料金も抑えられたら、地球にもお財布にもエコですね。
各電力会社の公式サイトもぜひ覗いてみてください。
公共交通機関の利用
2つ目は公共交通機関の利用です。国土交通省によると、自動車のCO2排出量について、次のような報告がされています。
2019年度における日本の二酸化炭素排出量(11億800万トン)のうち、運輸部門からの排出量(2億600万トン)は18.6%を占めています。自動車全体では運輸部門の86.1%(日本全体の16.0%)、うち、旅客自動車が運輸部門の49.3%(日本全体の9.2%)、貨物自動車が運輸部門の36.8%(日本全体の6.8%)を排出しています。
国土交通省 HPより
このように、自動車のCO2排出量は、日本全体の約2割を占めると言われています。
そこで、公共交通機関を利用し、一人当たりが自動車を使う機会を減らしていくことが重要視されていきます。
バスやタクシー、電車など、交通網が発達している地域では、これらを使うことで自動車を使うよりも快適に目的地に向かうことができる場合もあります。運転疲れとも無縁になりますので、運転が苦手な方にもおすすめです。
近場の外出であれば、自転車や徒歩の活用も有効です。良い運動にもなりますし、自動車で向かう時とは違った景色も楽しめます。
自動車を使わない外出も、是非してみてください。いつもと違う気分でお出かけできますよ。
食品ロスを減らす
3つ目は食品ロスを減らすことです。食品ロスとは、本来食べられるはずなのに、捨てられてしまう食品のことを指します。
環境省によれば、食品ロスについて次のように報告しています。
本来食べられるのに捨てられる食品「食品ロス」の量は年間522万tになっている
農林水産省 HPより
これだけの量が捨てられているのです。これは大変もったいないことです。
加えて、これらを生ごみとして廃棄するのにもCO2を排出しますので、環境にも悪く良いことがありません。
食品ロスを減らす行動としては、次のことが挙げられます。
- 陳列されているお弁当やお惣菜は、手前からとる
- 賞味期限の近い値引き商品を買う
- 食べ切れる量を買う、または注文する
こうした行動をすることで、食品の無駄な廃棄を減らすことができます。
適切な量の食品を買って、きちっと消費することで、少しでも食品ロスを減らしていきましょう。
プラスチック用品の使用を減らす
4つ目はプラスチック用品の使用を減らすことです。
すでに企業ではプラスチック製品の不使用、プラスチック包装の廃止などを進めていますが、我々もプラスチック製品の代わりとなる商品を積極的に使っていくことで、地球環境に貢献できます。
丈夫な紙製のものやリユースできるもの、環境にやさしい素材を使ったものなど、プラスチックの原料となる石油を使わないことを心がけると、石油の枯渇を遅らせることにつながります。
現在はプラスチックの代替素材として、ダンボール・古紙等が原料のパルプや石灰石を使った素材が実際に開発されています。これらを積極的に活用していくことで、プラスチックいらずの生活が実現できるかもしれません。
省エネを心がける
5つ目は省エネを心がけることです。
エネルギーの無駄遣いを減らすことは、取り組みとしては小さく数人程度しか行わないようなものでは効果が薄いです。しかし省エネを心がけることは誰でもできることですから、多くの人が省エネ生活をすることで、地球環境に絶大な効果を発揮するかもしれません。
主な省エネ対策としては、やはり節電が挙げられます。使う電力を減らすこと、使う電力を切り替えることなどが挙げられます。
減らすための対策としては、消費・待機電力のチェック、家電の省エネモードの活用などが主となります。一方切り替えについては、省エネ製品、電力使用の少ない製品を導入するなどが有効です。
災害時の停電や計画停電の話など、電力事情はこれまでより確実に厳しくなっています。電力の供給がなくなれば、私たちの生活は一変してしまいます。
電化製品は大変便利ですが、一方で多くの電力を消費します。節電しながら省エネを心掛けた生活をしていきましょう。
まとめ
近年、海面上昇や異常気象など、いよいよ環境の異変が私たちの目にも明らかになってきました。世界は今、地球のこれからを考えなければならないという大きな局面にやってきました。今一度これまでの活動を顧みて、しっかりとした対策を立てるべき時が来たのです。
これ以上地球への負担がかかると、現代を生きる私たちだけでなく、将来の世代への負担がさらに増えていくことは容易に想像できるでしょう。
より安全で安心な環境に住み続けるために、私たち一人ひとりが環境を守る行動をしていけば、それが連鎖的につながり大きな力を生みます。
もちろん急激にライフスタイルを変えることは難しいでしょう。しかし、ここまで紹介してきたことを少しずつ実践していけば、少しずつ効果が出てくるかもしれません。ほんの少しでの行動でも、それが地球がより長く動き続けられる原動力になるはずです。
ぜひ、明日から行動に移してみてください。
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